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「いつもお疲れ様です、籐堂院さん」
せめて僕だけはと籐堂院さんに笑みを向けてみたりする。
楽しくもなにも感じたりもしないのだけれど、多分、これが正しいはずだと考えて作った精一杯の作り笑顔。
そんな僕の顔を、籐堂院さんはチラッと見て顔を顰めると「おう。」と僕に返事を返しそっぽを向きながらも、徐に腕を伸ばしてカウンター越しに僕の頭を撫でてくれた。
籐堂院さんの手は大きくて温かくて、僕は彼に頭を撫でてもらうとひどく安心する気がする。
「…お前も頭撫でられるの好きみたいだな」
目を細めてそのまま籐堂院さんに撫でてもらっていると籐堂院さんはふっと笑みを浮かべて言った。
「はい。籐堂院さんの手は大きくて暖かくて優しいので好きです。」
「ああ~わかるわかる~!なんかお父さんに撫でられてるみたいで気持ちいいんだよねぇ!」
素直に好きだと返せばマスターもにこにことしながら同意して、それを聞いた籐堂院さんは目を瞬いた。
「俺の手…お、おやじみたいなのか…?」
「はぁ?なんでそうなんの~?龍ちゃんってやっぱり馬鹿なの?」
そして、何を勘違いしてしまったのかショックを受けたような顔をし、それを見たマスターは不機嫌そうな声でそう言うと未だ僕の頭に乗ったままになっていた籐堂院さんの手を取って、自分の頬へと導いて笑った。
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