消された少女

9/20
前へ
/313ページ
次へ
「うわあああああ!」 思わず叫び、踵を返す。 ――折れていたのだ。 少女の首が、直角に折れ曲がっていたのだ。 それはまるで、幼い頃にいたずらで踏み荒らした百合畑に残された光景に似る。 美しく咲き誇っていた花の、あまりに呆気ない死の瞬間。 このまま朽ち果てるばかりを待つ、悲しい花の姿。 しかし、少女は笑っていた。 白く細い首をへし折られたまま、あの日と同じ笑顔でこちらを見つめていたのだ。 ――有り得ない。 ――この世のものではない。 なぜ、なぜ俺の前に現れた。 初恋の少女の姿で、俺の前に現れた! 舗装された坂道を、転がるように駆け下りる。 それはまるで、あの頃と同じ鬼ごっこ。 振り返ることすらできない、鬼ごっこだった。
/313ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18544人が本棚に入れています
本棚に追加