消された少女

12/20
前へ
/313ページ
次へ
「それにしても、大きくなったなあ、準。もう酒も飲めるんだよなあ」 引き起こした準の背中を乱暴に叩きながら、父親が嬉しそうに話す。 対する大石は、苦笑いを浮かべながら頷いていた。 大石の父の名は、大石岩男。 母の名は大石遥香。 二人の間に子供は大石準一人しかなく、その久々の帰郷が嬉しくないはずはなかった。 「さあ、とにかく入れ入れ! 母さんも待ってるぞ」 「あ、ああ……」 相好を崩しっぱなしの父に対して、大石は少し複雑な表情を浮かべる。 父の喜びの裏には、鉄工所の跡継ぎとしての期待がある。 そう思っていたからである。
/313ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18544人が本棚に入れています
本棚に追加