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「さて、荒井の家まではまだここから少し歩くからよ。例の話、詳しく聞かせてくれよ」
「例の話……？」
木村の言葉に、大石が首を傾げる。
その様子を見て、木村は呆れたように続けた。
「おいおい、もう忘れたのかよ。お前の初恋の女の子を捜すんだろ？」
「ああ、それか……」
この島に来るまでの船内で話したことを思い出す。
両親の言葉と、駐車場での恐ろしい体験に、彼自身の気持ちはだいぶ萎えてきていたのだが、友人達はそうではなかったらしい。
証拠に、木村と榊原の瞳は、まるで玩具を買い与えられた子供のように輝いている。
それを確認した大石は一つ大きな息を吐いて気持ちを落ち着かせる。
フラッシュバックしてくる駐車場での記憶を振り払うように、大石は出来る限り明るく、友人に応えるのだった。
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