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「おいおい、まじかよ! 学生のころに話してくれれば良かったのによ」
荒井が笑いながら大石の肩を組む。
大石はと言えば、困ったように苦笑いを浮かべるのみだった。
「初恋相手探しな、勿論協力するぜ! 案外、大石が俺たちの次に結婚しちまうかもな」
「ちょっと、孝治。あんまり騒ぎすぎないの。今どこにいるか、何をしてるのかも分からない相手なんだから」
そう言いながら、佐和子がチラリと彩芽と詩織の様子を窺う。
案の定、複雑な表情を浮かべる二人に、佐和子は小さくため息を吐いた。
「あの……お手洗い借りてもいいですか?」
その時、不意に立ち上がったのは、ずっと俯いていた詩織。
何かを察したように佐和子も立ち上がると、そのまま案内と称して二人で部屋を出てしまう。
しかし、後に残された男達には、そんな微妙な空気など察知できるはずもない。
卒業アルバムや大石の初恋を肴に、狭い部屋で馬鹿笑いをあげるのみだった。
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