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小さな虫の小さな目が僕に語りかけてきた。
『君は大きいだけで私と同じなのね』
それを僕の妄想だと言って片付けるのは簡単だった。破かれたノートの裏に書かれていたかもしれない夢物語だと、薄汚れた学ランに付いた関くんの足跡が表す意味だと納得すればよかったのかもしれない。
それでも、瞼の手前に浮かんだ彼女の世界と、頭の引き出しに仕舞い込んだ僕の世界にさしたる違いが無かったことだけは誤魔化しようのない事実だったし、両親が辿った道も関くんの現在過去未来も同じようなものだろうという閃きには全くと言っていいほど否定材料が足りなかった。
事実……いや、真実だったのだと思う。
お父さんが友人に半ば騙されたように買った毛足の長い絨毯に飲まれた彼女が語ってくれたのは、妄言でも戯言でもない、箴言だったのだろう。
それに気付いた僕は、家の中を駆け回ってしまった。
その途中、蟻は踏んづけてしまった。
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