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その発見はまさに青天の霹靂だった。衝撃たるや、誰も居ないはずの家で誰かこの発見を聞いてくれる人が居ないか探し回った程だ。
気付かずに済むなら、そのままで居たかった。人を探した理由は「そんな馬鹿な」と笑い飛ばして欲しかったからなのだろう。身に過ぎた幸運が信じられないのと同じで、その発見の恐ろしさは中学生の身に余った。
きっかけは、虫。
今日は体育があったので、多分体操服についていたのだろう。母親が作ってくれた巾着から一匹の蟻が這い出してきた。
普段の僕なら潰してごみ箱に捨てるか、わずかばかりの仏心で外に逃がすかしただろう。
しかし、僕は蟻を見つめたまま動かなかった。正確に言うなら、動けなかった。
ようやく生えはじめた僕の脛毛で作れそうな小さな蟻が、僕のことを見ていたからだ。
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