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「お前、うぜえんだよ。」
冷たい声と一緒に、ガンッとお弁当に突き立てられたのは昨日の昼休みに行方不明になっていた私のペンケース。
そこはかとなく、なんてレベルじゃなく明らかにゴミ箱の臭いがする。
飲み込んだはずの胃の中身が、その臭いのせいで逆流しそうになる。
「ご………ごめんなさ………。」
だけど呟くように言った言葉は、ギラギラとした眼の持ち主達には届かない。
「ああ?
シカトこいてんじゃ、ねえよ?」
ぐり、と混ぜられたお弁当に、ペンケースに付いていたゴミが落ちてきて、奇妙な模様を描いた。
「俺のオモチャに何の用?」
その時、背後からかけられた不機嫌そうな声に私も、私の周りを取り囲む女の子達も一様にビクリと身をすくませた。
「や、やあだ。
ライ君のオモチャに手を出したりなんかしてないよう?
ただ、この子が落とし物をしてたから親切に届けに来てあげただけじゃん?」
私の前に立って、つい今しがたまで激しい感情を宿した視線で私を貫いていた彼女は、彼に極上の笑顔だと思ってもらいたいんだろう表情を彼に向けてニコヤカに笑う。
「ンナ言い訳はいらね。
俺のオモチャにちょっかい出してんのかどうかを俺は聞いてんだよ。」
「やだなあ。
そんなに大事なんだ?」
「るせえ。
用ないんなら、消えろ。
俺は今、マジで気分悪ィ。」
彼の声は先刻より更に低くなっていて、キレたら何をするか判らないと噂されている狂犬のような彼のスイッチが入りそうになっているのが彼女達にも容易に伝わったみたいだった。
「ち、ちょっかいなんて出してないって。
あ、そうだ、購買に行かなきゃ。」
口の中でこね繰り返したようにゴモゴモと言いながら、彼女達は後ずさり。
そうしてバタバタと教室を出ていった。
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