163人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな風に無意識に理人と比べていたことに気付いたのは、隣に座る彼が声を掛けてきた時だった。
「俺のこと、誰だか分かる?」
ドキっとした。理人と比べていたことがバレたのかと思った。
冷静に考えれば、比べてたからどうだって話なんだけど。
どっちにしても失礼っちゃ失礼か。
「あ…、いや。顔は見たことあるけど。」
なんとか頭を落ち着かせて聞かれたことに応えた。
こんなとこで動揺するなんて不自然すぎる。
もうすぐ夏が来る。そんな日差しを受けながら、俺は彼の会話に集中する。
「そっか。じゃあ自己紹介から。俺は菅野。菅野達矢(かんのたつや)。知ってるかもだけど、隣のB組で、身長は…、」
気を悪くした様子もなく、スラスラと話し始めた彼にしばし唖然。
身長、体重、部活、趣味、家族構成、家の場所まで伝えてくる彼に思わず噴き出した。
「ふっ、ははっ、あはははっ!」
突然笑い出した俺に、驚いた様子の菅野はふっと息を漏らすように笑うと、優しく笑った。
腹を抱えて笑っていた俺には見えなかったけれど。
一通り笑った俺はダラと体を伸ばし、だらしなく椅子にもたれた。
なんか笑いすぎて体力使った。
.
最初のコメントを投稿しよう!