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「あー、自己紹介でそこまで話す奴、初めて見た。久し振りにこんな笑ったわ。」
何にも言わなくなった相手に、もしかして怒らせてしまっただろうかと不安になる。
初対面といってもいい状況で、わざわざ自己紹介をしてくれたのに。
いや、あきらかに情報開示しすぎだったけど。
凭れていた背を持ち上げ相手の顔を窺うと、予想と違って気分を害したようではなかった。ってか、逆に…。
「……えっと?」
「緊張、ほぐれた?」
「あ、……うん。」
俺が警戒心ガチガチだったから、あんなことを言ったのか。
うん。擽ったい気遣いで、嬉しい。
嬉しいんだけど、そんな温かく微笑まれても、どうしていいのか分からない。
なんだかほんわかした空気になって、でも初めの警戒心なんてほとんどなかった。
こんなにすぐに打ち解けられる相手はそういない。
優しい雰囲気の菅野に飲み込まれるように、心が落ち着いた。
こんな落ち着いた感覚は久し振りな気がする。
体の中の悪い空気を吐き出すみたいに長い吐息を吐いて、空を見上げた。
いい天気、だった。
こんな綺麗な青空に気付かなかった自分が、すごくちっぽけに見えた。
結局俺は自分の殻に閉じこもっていたんだろうか。
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