君は嘘の味を知ってるか?

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◇◇◇ あの一年をどう形容したら良いのか、俺は未だに決めあぐねている。青春と呼ぶには色が薄いし、お伽噺と騙るには血生臭い。 なら、ただの一年で良いのだろう。俺の長い(或いは長くなった)人生のほんの一部。そんな風にまとめてしまうのは、些か寂しい気もするが、なにせ人生は長い(或いは長くなった)。もしかしたら、それ以上にブッ飛んだ将来が俺を待っているやもしれないのだ。 まぁ、あんな一年を何回も迎えるような人生なんて、ゴミ袋にまとめて収集所に出してやるんだが。 閑話休題、結局の所、胸も傷まず明日を無事に迎えた俺を待っていたのは、俺が望んでいた物だった。つまり、平穏、平和、恒常、日常。素晴らしい響きだ。 そんな望み通りの毎日を、一緒に過ごしたかった奴も何人か居るがもう叶わぬ願いだ。それを自ら選んだ奴も居るし、自業自得の奴も居る。アイツらはそれぞれ、自分の場所で上手くやっているのだろう。 ――あの馬鹿騒ぎの一年、乱痴気とか狂気とかが飽和っちゃった一年で、俺は呆れる程の人間と出逢い、そして出来事を経験してきた。それらを踏まえて言えるのは、 『明日は必ず来る』 そんな陳腐で当然の、だが儚い真理だ。 ◇◇◇ .
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