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不適に笑うと、ギーシュは杖を二度振ってやる。
地面に落ちたそれから何体かのゴーレムと、一本の剣が現れる。
自分自身はその剣で武装し、防御を固め、ゴーレムで攻撃をさせるという魂胆なのだろう。
本気を出した、とはいっても所詮は数が増えた程度。
その程度なら、彼にとっては大したことではない。
もう一度軽く腕をスナップさせ、曲げた膝に腕を置く。
そして走る。
向かってくるワルキューレの攻撃を回避しながら、逆に足場として利用してギーシュへと近づく。
ここまではある程度予想していたのか、彼はその手に持っていた剣を振るう。
が、巧から見れば、それはあまりにも遅すぎる速度。
腰をかがめてそれを回避すると、次に剣を握っていた手を掴んで腹部を何度も殴ってやる。
剣を手放し地面を転がったギーシュに対して追撃を行おうとする巧を背後からワルキューレが攻撃してくる。
流石に対応しきれずに攻撃を背部に受けてしまうが、そのまま前転してギーシュの落とした剣を奪う。
それと同時に巧の体に不思議な現象が起きる。
左手の紋章が輝き、途端に体が軽くなった。
一体何が起きたというのだろうか。
これも、魔法という奴の一つなのだろう。
とりあえずは納得することにする。これで、あれを使っているときの様に動けるなら、問題は無いと思うことにしよう。
手に持った剣を振るい、一体のゴーレムを切り裂く。
ついいつもの癖で腰に手をやり、バックル部をいじってしまう。
そこにはエンターキーがあり、必殺の一撃を与えるために必要な行為だった。
別にあの姿になっていないっていうのに、こんな行為をしてしまう自分に内心苦笑しながら次々切り捨てていく。
全ての敵をあっさりと切り伏せてしまうと、剣を無造作にほうり捨てる。
そして再び接近。
ダメージから回復しきれず、その場で四つん這いになっているギーシュの腹部を蹴り上げる。
そのまま転がっていくギーシュ。
誰の目から見ても、勝敗は明らかだった。
最早立ち上がる気力すらないギーシュに対し、十二分に余力を残している巧。
結局巧がまともに攻撃を受けたのは最初と、背後からの一撃のみ。
どちらも不意打ちに近い一撃だった。
あまりに一方的なその結果にただ周囲は沈黙してしまう。
巧の戦い方にも恐れを抱いてしまったのだ。あまりに暴力的なラフファイト。相手に反撃すら許さない圧倒的な暴力。
それが見るものに恐怖を与えたのだった。
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