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……ここは何処だ。
一人周囲を見回してそう思う。
確かに自分はあの時灰に成り果ててしまったはずだった。
だというのに何故ここにこうして立っているのだろうか。
目の前には桃色の髪をした少女が一人。
その周囲には彼女と同じ年代と思われる少年少女たちが一様に自分のことを見ている。
服装から推測するに、彼女たちはおそらく学生なのだろう。
一人だけいる頭の輝くおっさんは引率の教師と見たほうがいいだろう。
なにやら桃色の髪の少女が頭の輝く男に何かを訴えているかのようだがそれは聞き届けられなかったらしい。
肩を落とし、少し赤くなりながら彼女はこちらに近づいてきた。
「感謝しなさいよね。貴族にこんなことをされる事なんて、ないんだから」
何を言ったのかは解らなかったが何かをしようとしているのは解る。
「おいお前! 一体何を――」
彼がその言葉をつむぐ前にその口は少女の口で塞がれた。
唐突の事に驚きで言葉を失った。
そして我を失っているその一瞬の後に彼の体に異常が起こる。
左手の甲から全身に広がる苦痛。
焼けるような痛み。
何かが刻み込まれるかのような、そんな痛み。
まるで自分の体に烙印を押されるかのような、そんな歪な苦痛に彼は耐える事が出来ずに気を失ってしまう。
この邂逅が何をもたらすのか。
今はまだ、誰にもわからない。
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