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「夢を持つとね、時々すっごく切なくて、時々、すっごく熱くなるんだ」
「夢ってのは呪いと同じなんだ。途中で挫折した人間はずっと呪われたままなんだ」
「俺には夢がない。でもな、夢を守ることは出来る」
「俺はもう迷わない。迷っている内に人が死ぬのなら……」
「戦うことが罪なら――」
夢を見た。
ひどく懐かしい夢だ。
あれは自分が人として戦う力を得た頃の記憶。
赤いフォトンストリーム、銀色の装甲、黒いスーツ、黄色の複眼。
まるで英雄(ヒーロー)のような姿となって彼が対峙していたのは、灰色の化け物と呼ぶに相応しい生物。
何故今更こんな夢を見たのだろう。
まるで走馬灯のよう。実際彼は死んでいるのだから間違いはないだろう。
「やっと起きたのね」
巧が目を覚ますとそこはどこかの部屋だった。
昼間いた場所は広場だったから運ばれたのだろう。
黙って彼は周囲を見渡す。
ベットにクローゼット。小さなテーブルが一つ。
おそらくここは彼女の部屋なのだろう。
小ぢんまりとした部屋だ。シャワールームがないどころか、電気もない。部屋に明かりを灯しているのは蝋燭のみ。
「おいお前。お前は一体なんだ。ここは一体何処なんだ」
「まったく、貴方を運ぶの大変だったんだからね。あんなところで気を失って。ご主人様にいきなり迷惑をかけてから」
巧の言葉など聞こえてもいないかの様に、彼女はただ一人話を続ける。
「お前いい加減にしろ。人の話を聞け!」
彼が叫ぶとルイズは鬱陶しそうに頭を左右に振る。
「ああ、もう。五月蝿いわね! ええっと、確か沈黙の魔法を……」
彼女はそういうと、ぎこちない口調で呪文を唱える。
当然の如く魔法は本来の意図に反し爆発を起こす。
それに驚くことも無くルイズはケホッ、と咳を一つする。
「お前は俺を殺す気か!」
突如と起きた爆発に驚きながら怒鳴りつける。
え? と。彼女はきょとんとした表情で巧の顔を見る。
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