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それっきり巧はなにも言わなくなってしまった。
どうやら本当に寝てしまったのだろう。
溜息をはくとそのまま彼女も着替えて寝ることにした。
この使い魔に振り回されてばかりでルイズ自身も疲れたのだろう。
すぐにまどろみへと意識を手放してしまった。
そして翌朝。
「朝よ、早く起きなさい!」
能天気なのか図太いのか、敷き詰められた藁の上で寝転がっていた巧を起こす。
うなり声を上げながら、巧はゆっくりとその体を起き上がらせる。
この状況で十分な休息を取る事ができるなんて、どれだけの図太い神経をしているのだろうか。
「まったくご主人様よりも長く寝るなんて。出来損ないも良いところだわ」
「だから俺はお前の使い魔とやらになったつもりはねぇ」
面倒くさそうに彼は言う。
「黙りなさい。貴方の左手に刻まれているルーンがあんたが私の使い魔である何よりの証拠じゃない!」
ルイズは怒鳴りつけると適当に引っ張り出した制服を巧に投げつける。自分の下着もついでに、だ。
「おい、こいつは一体何のつもりだ」
「私に着せるのよ」
「はぁ? そのくらい自分でやれよ」
「普通貴族は召使を抱えている場合、自分で着替えなんてしないのよ。わかった?」
「ふん、つまりは自分では何にも出来ない役立たずって事か。だから着せ替え人形みたいな事が出来るって事か」
「へぇ、ああ、そう。じゃあ貴方には罰を与えないとね」
少しばかり考え込むと彼女はすぐに答えを出した。
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