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「そうね、これから貴方に朝食を出そうと思っていたけれど、そんな態度を取るようならご飯はなしで良いわね」
どうやら彼女が考え付いた罰というのは食事をなしにするというものらしい。
彼も生物である以上、空腹には勝てないと判断したのだろう。
普通ならそうだが、乾巧という人間は違った。
「ああ、別に構わないぜ。俺は俺で、食料を調達してくるからな」
そんな軽口をたたくと、彼はゆっくりと立ち上がって扉へ向かう。
「ちょっと、一体何処へ行くつもり?」
「言っただろ。俺は俺で調達してくるってな」
「使い魔がご主人様のそばを離れる気!?」
「だから何度も言わせるな。俺はお前の使い魔じゃねぇよ」
それだけ言って部屋を出ようとしたその時だった。
背後から突然首に枷をつけられたのだ。鎖のついた首輪。
さながら犬のようなそれを手で触って確認する。
「一体なんだよこれは!」
「私の使い魔が勝手に行動しないようにするための鎖よ。まったく。念の為に準備しておいて正解だったわ」
「俺は犬でもねぇぞ!」
「黙りなさい。貴方はそれをつけていれば良いのよ」
ふざけるな! と巧は怒鳴りつける。けれどルイズは何処吹く風か、平然とした態度で鎖を引っ張って柱にくくりつけた。
その気になれば巧はこんなちゃちな鎖一本引きちぎれない理由がない。
だがそれをする為に力なんて使いたくないのだ。
自分が忌み嫌う力を。
巧がその場に座り込んで黙りこくっている内に、ルイズは制服へと着替える。
目の前に男がいるなんて意識すらしていない。ただ、そこに物がある程度の認識に過ぎないのだろう。
手早く着替え終わると、そのまま鎖を引っ張って部屋を出る。
てこでも動かないつもりだったが、思ったよりもルイズの力が強くて仕方なしについていくしかない巧であった。
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