プロローグ ー回想ー

3/6
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
更に悪い事に、半径10キロメートルに及ぶ私の陣地ももう直ぐ境界線だ。この境界線を超えてしまえば私が知らぬ真闇の森の中、木々の配置も分からないのだから逃げる速度は落とされ、敵には容易に索敵されてしまい追い付かれてしまう。 打開も出来ない現状に歯軋りした。 限界地点はもう直ぐ、それまでにどうにかしなければならないのに何も出来ないなんて……。これが1位の実力なのだから、相手からしたら笑ってしまう程無様な事であろう。 大木の脇をすり抜け、ちょっとした崖から降りて着地をすれば、足には砂利を踏みしめる感覚と川のせせらぎが聴こえる。 この川を飛び越せば、もう私の管理しない陣地外。広大な知らぬ森へ踏み込む度胸は無く、もう逃げられないと分かっていたから、開けたこの河原で追跡者を迎えるしかない。 ほんの数秒しか経たぬ間に、追跡者も崖から飛び降りて私の前で止まった。こちらは息も絶え絶えだと言うのに相手は息を乱しておらず、その気配はまるで余裕そのものだ。 「どうしたよ魔女、鬼ごっこは終わりか?」 口調からも余裕を隠そうとはしていなかった。挑発し、こちらの神経を逆撫でようとする男の声。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!