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なんやかんやで今日のノルマが終わったのは夜の7時ごろ。
今日ははやく終わった。
いつもは8時、9時なんてざらで、遅いときなんて10時に終わるかどうか。
普通の私立校だったらこんな時間まで学校にいさせてもらえないけど、俺らの学校は全寮制だし、生徒会が全てのイベントを回してるから、少しくらい遅くなっても平気だ。
「おつかれー」
「お疲れさまでした。ではまた明日」
そういって颯爽と帰って行く副会長を横目に俺も寮へと足を進ませた。
あ、いや違うや。
進ませようと、した。
「おい、綾哉」
会長にがっちりホールドされてしまった。
「なに?かいちょー」
俺が役職名でよぶとムスッと眉間に皺をよせてちょっと不機嫌になった
「今は、雄汰だろ」
「ん、ごめん。雄汰」
会長は恋人スイッチが入ると俺に名前でよばせたがる。
そーゆーところは、かっこいい癖にかわいいから困る。
「明日、忘れんなよ」
「うん。もち、わすれないよー」
何をかと言うと、俺らの半年記念の事だ。
なんとも珍しいことにかいちょ、あ、いや雄汰からデートのお誘いをしてくれた。
雄汰からのお誘いが1回もなかったって訳じゃないけど、それでも誘ってくれたのは、ほんの1、2回。
元々デート自体もあんまりしないからどれほど貴重か分かってもらえるとありがたい。
なんか半年記念ってこそばい感じがするけど、なんやかんやで半年一緒に過ごしてきたんだなぁって改めてしみじみ。
「楽しみだね」
ふふって笑ったら雄汰に軽くちゅーされた。
「ああ、そうだな」
雄汰もクククとわらってそう答えた。
いつもは、寮の入り口にあるやたら広いロビー集合なんだけど、明日は雄汰がなんか用事があるらしくてこの近くの駅で集合だ。
「じゃあ、帰ろっか」
まだ生徒会室にいたのを思い出して、雄汰にそう切り出した。
「あぁ…」
静かに一言だけ答える雄汰はなんだかとっても愛おしくて、とってもカッコ良かった。
でも、幸せだったのはここまでで、雄汰も俺も笑顔を見せれたのはここまでで。
今の俺の、一番キレイで一番新しくて
一番残酷な思い出―――――
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