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第一章 エンブレム
「っ、ん~……もう朝?」
チュン……チュンと、スズメの鳴き声に起こされた。布団から起きて、眼をこする。昨日はすこし夜更かししてしまったせいか、まだ眠い。
「麒麟ちゃ~ん。朝よ~」
「は~い。わかってるよ」
俺はなまった声で返事をした。俺の名前は松平麒麟。
朝を教えてくれた、先程のおばあちゃんと二人暮らしだ。家はちょっと貧乏で、二階建てのボロアパートを借りている。
将来の夢はそうだな。音楽関係の仕事に就職すること…かな。
「麒麟ちゃーん。ご飯できたわよ~」
「うん。すぐいくよ」
ドアを開けると、玉子焼きのこうばしい匂いがただよってきた。
テーブルの上には、やはり玉子焼きが。
「ささっ、食べて。学校遅れちゃうわよ」
台所から白髪が似合う俺のばあちゃんが、顔をだした。
「はーい。それじゃ、いただきます!」
こうして普通で、平凡だった、俺の日常の最後の日が幕をおろした。
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