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そんな私たちの間には、どっと明るい空気が流れ込んだ。
これでもか!ってくらいデレデレした顔をしたゆりあと、そんなゆりあを引きずるようにしてロッカールームにやって来たおぎちゃん。
「あ、真那さんおはよー!」
「おはようございまーす!」
「おはよー。幸せそうだね」
「おぎちゃんがわざわざ手作りのくれたんだよねっ!」
「ゆりあもでしょー」
「いちゃいちゃいちゃいちゃ目障りやき、あっち行けー」
みぃに厄介払いされても、おぎちゃんとゆりあのニコニコは止まらない。
「みぃそんなこと言っていいんだー?」なんて、おぎちゃんがロッカーから可愛い包みを取り出す。ひらひらと宙を舞うそれは、やっぱり甘いチョコレート。
みぃはいつもみたいに目を見開いて、「ごめんごめん嘘やき」と言っておぎちゃんに近寄った。ゆりあも同じように、みぃにチョコレートを渡す。
「美味しいかわかんないけど」とゆりあの一言にみぃは優しく、「いいーっていいーって」なんて言った。
「真那見たか!!みぃの方が多…、」
「「はいっ!真那さん!!」」
「わーありがとう二人ともー!私からもあるよー」
「やったー!」
「……、って、みぃだけじゃないのかよ!くそー!」
悔しがるみぃをよそに、二人は私からのプレゼントを喜んで受け取った。しかしそんなのも束の間。
「そろそろ行かないとー」っておぎゆりが手を繋いで出ていくロッカールーム。
本当にそろそろ時間やばいかな、って思う。と同時にそわそわした。
「なにしちゅう。もうレッスン始まるき、行こ」
「あ…、…待って、ちょっと」
「ん?」
私の横を通り過ぎようとしたみぃの腕を咄嗟に掴んだ。じんわりと湿ったその腕は、柔らかく、温かい。
どくん、と心臓が元気よく跳ねた。みぃが不思議そうに、少し俯く私を振り返る。
レッスン場から聞こえる女の子の笑い声。夜にやって来る心地好い疲労感。ロッカールームを満たす甘い匂いに、みぃからよくする柔軟剤が香った。
みぃは、私を待っている。
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