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「―そうか。君にとっては最も性格の合わない患者さんだろうね」
「自分の体を人に治してもらうって言うのがどんだけ大変で、ありがたい事なのかまるで分かってねぇ様子だったな」
「まぁ、専門家だからそれが出来て当然、としか思わない人もいるけどね。私も聖職者としてはいっとう高い職位にあるから、そんな風に接してくる人は割合多い気がするなあ」
シャンウェイ総主教、リウ・リンガン。今、俺の目の前に立っている男はそんな名前と肩書きを持つ。東海王国の王都シャンウェイで冒頭の男の治療を終えた後、俺はそこにある大聖堂に赴いて、立派な"がたい"と肩書きを持ったこの坊さんと喋っていた。
「例えばそうだね・・・一度も神学校や教会で教えを受けていないのに、聖術を教えてくれという人も過去に何人もいたかな。まずは神力の引き出し方を教えて、そこから術式を教えて、とまあそんな風に段階を踏まなきゃいけないわけだから、それはそれは苦労したのを覚えているよ」
「で、教えた後には礼の一言もくれなかったってわけか」
「そうだね。お布施も頂いたけど、正直言ってあってないような額面だったね・・・まあ、中央の高級官僚の子弟だったから、下手に突っかかる事はしなかったけどね」
「ま、態度のでかい奴の言う事なんざ、いちいち気にしてたら仕事になんねぇだろうしな。・・・東海じゃ、あんたみたいに偉いのに腰が低い奴の方が珍しい気がするね」
「低いというより弱いといったほうが良いのかもしれないけどね」
リウは、そんな自虐をしながら苦笑いを浮かべた。
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