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やっと就職できたと思ったら、左遷されました。ドジだ、ドジだと思っていたら、とうとう左遷された。人生でも分別された気分だよ、くそ。
「左遷された」
「ドジっ子だもんね」
「世に言うドジっ子☆です」
「そんなかわいく言ってないけど」
横目で私を馬鹿にするコイツは、私の一つ違いの兄の潤である。私と違う、出来る方の兄。
「ドジだとは思ってたけどここまでとはねー」
「うるさいな、私だって必死でやってきたのに」
「いや、むしろ就職できたのが奇跡に近いだろ」
潤は、とどめにそう言うとにやりと笑った。幼い頃から、潤にはいじめられてきたけど今回だけは響く。心に、いやもうそりゃ色々と。
「いや、その手には乗らない」
「何言ってんの」
「潤の言葉をまともに聞いたら自殺するかんね」
「うん、だろうね」
「持ち前のメンタルの強さだけで生きてんの」
「ウザ」
「聞こえないから、やめてよその抽象」
「変換ミスしてるぞ、アホ」
「・・・」
潤は、颯爽と立ち上がるとあたしの目の前を通り過ぎる。ノックアウトとは、こういうことを言うのだ。
「いや、ここからここから」
もう、自分のメンタルの強さには乾杯だと思う。てゆうか、自分超ポジティブ!いや、ほんと!これ取り柄!てゆうかクビじゃないし。ただの左遷じゃないか。そりゃー本社の方が何かと便利だし最寄りも近いし、なんだかんだ言って立地最高だったけど・・・あー、左遷したやつとりあえずコブラツイストだな。四の五の言わず、コブラツイスト。
「よし」
そういつだって人生って七転び八起きな訳で。だから今回のこの左遷に、私はこっそり賭ける事にした。
この残念な自分が変われますようにって。
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