第一話:夢から覚めて……

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「俺の話聞いてなかったの!?」 と、(蛍樹にとったら)開口一番に悠都にツッコまれた。 「何時俺が悠都の話に返事したんだよ。どうせ勝手に一人で語ってたんだろ?」 「うぐっ!?そうだけど……あぁもういいよ。早く行こっか」 悠都はもう何もかもを諦めた様な溜め息を吐くと、生徒会室のドアノブを右に捻ってドアを開けた。 中には生徒会役員である先輩達数人が長机に座って黙々と仕事をしていた様子だ。 「あのー、生徒会長さんはいますかー?」 「あ、私!!私です!!二人共、此方に来てくれない?」チョイチョイ 悠都が空気を伺う様な言い方で生徒会長の所在を尋ねると、一番奥にあるPCの置いてある机に座っていた女生徒が、元気良く声をあげた。 制服をキチンと着こなし、清楚で純真なイメージの黒髪ロングはポニーテールで真横に結っていた。所謂、サイドテールなる髪型だ。 美人系のモテそうな先輩と、二人は印象付ける。 蛍樹と悠都は言われた通り、チョイチョイと手招きをしている女生徒会長の下へ行った。 「で、俺達は具体的には何をすればいいんですか?」 悠都は可愛らしく小首をコテンと傾げると、生徒会長は一瞬顔を赤くして固まったが、直ぐに我に返った。 「あ、えと……他の役員達の子もだけど、頼まれた事をこなして下さい。早速、神原君に頼みたい事が……」 「俺がしましょうか?」 「いえっ!!これは神原君にしてもらうので、渡瀬君はまだ座っていて下さい!!!」 「あ…はい」 悠都は生徒会長のただならぬ気迫に負け、近くの壁にあったパイプ椅子を解体し、其所に座った。 蛍樹はと云うと、女生徒会長に早速呼び出され、数個の紙束に纏められた書類+αを渡された。 「この纏めた書類は教頭先生へお願いします。で、此方の+αは数学準備室に居る筈の花村先生へ。ボソッこれが終わったら帰って下さい。貴方は必要無いのですからボソッ」 仕事の内容について指示された後、ボソッと小声で囁かれた本音。 はぁ……やっぱりそう云う事か。大嫌いな神原さんが居てたら最大限のアプローチが出来ねぇもんね…… 蛍樹は短くはい。とだけ答えると、カバンを持ったまま分厚い紙束と訳の分からない+αを抱え、『早く出てけ。そして二度と帰って来んな』空気満載の生徒会室を出た。 此方だって居たく無ぇよ。悠都狙いばっかの飢えた女子共が群がってる部屋なんかに。 蛍樹は再び耳にヘッドホンを付け、周りの雑音を掻き消す様に音量を上げると、教頭先生の元へ向かった。 .
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