第一話:夢から覚めて……

7/7
前へ
/115ページ
次へ
職員室にいるんじゃないかと察した蛍樹は、二階の職員室へ向かい、五十嵐教頭に紙束を渡した。 職員室を出る際に、丁度右隣に設置してあるトイレで用を済ませていたのか、数学教員の花村が出て来て、ついでに+αも渡しておいた。 女生徒会長に指示された事を全て終えた蛍樹は、胸糞悪い学校を早く出る為、何時もは校内にある自販機のジュースを買って帰らず、直で下駄箱へと向かい、学校を出た。 外は青春漫画によく出てくる様な夕焼けが広がっており、地面や建物、過ぎ行く人達が朱色に光っている様に見えた。 コンビニを通り過ぎ、民家を通り過ぎ、社会人の横を通り過ぎ、欠伸を欠く猫の横を、蛍樹は無言で通り過ぎる。 自宅のマンション前の交差点を通り、何事も無くエレベーターの三十階のスイッチを押す。 身体の中の内蔵が浮き上がる感覚に、蛍樹は酔いそうになるも、本格的に気持ち悪くなるまでに着いた、地上三十階の最上階。 最近のマンションにしては珍しい、漢数字で『三🌕🌕一神原』と彫られた表札の着いている扉を、蛍樹は開けた。 すると――――― 「…ん?目の前にはいつもの景色があるのに、足元は真っ暗だぁ…………糞神ぃぃぃぃぃぃぃい!!!!!!!!」 目の前には長いフローリング(冷暖房完全設備)の廊下。右には行き止まりの壁。左には先程開けたばかりの扉。しかし、足元には底が見えない穴があるではないか。 クソッ!!!糞神の野郎覚えてろよっ!!今度会ったらその羽全部むしり取って俺自ら調理してやるからなぁぁぁぁぁぁあ!!!!! 穴の存在に気付かなかった蛍樹は、案の定片足を穴へと突っ込んでしまい、そのまま何にも捕まることが出来ないまま、落ちて行きましたとさ。 チャンチャン☆ fin. てな訳で、我が物語の主人公、神原 蛍樹十六歳は現実から姿を消し、残った物は何もなかったのだった。 同時刻 紀輪社本社最上階 社長室 「……あら?」 「どうした、御己-ミコ-」 「…今、蛍樹の声が聞こえた気が、したの……気のせいね」 「何、馬鹿な事を言ってるんだ。あんな奴の事を考えているなら、明日の会議について準備しろ」 「そうね……すみませんでした、社長」 .
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1670人が本棚に入れています
本棚に追加