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夢から醒めた蛍樹は、ベッドに横たわっていた。
逆に、横たわっていなきゃ何時もは不自然に感じるのだが、今日は普通の姿勢に違和感を覚える。
きっと、夢の中で変な姿勢をとってたんだろうと、蛍樹は悟った。
「学校、行くかな……」
蛍樹は誰もいない空間で独り言を呟き、寝間着から制服に着替えた。
程よい厚みの鞄を肩に掛け、最近買ったばかりの黒のヘッドホンを耳に付けると、お気に入りの音楽を掛ける。
歌い手さんのだけどね。
○ADWIMPSとかも好きだよ?いきものがか○とか、福山雅○とかも。
家具が異様に少ない殺風景なリビングを通り抜け、数足しかない玄関で靴を履き、施錠をすると学校へ向かった。
朝御飯は……食べたくなかったから抜いた。
だって、朝に何か食べたら気持ち悪くなるじゃん。俺だけ?
蛍樹はマンションのエレベーターで一階まで降り、玄関で掃除をしている大家さんに挨拶をする。
「おはようございます」
「はい、おはようございます。いってらっしゃい、神原さん」
「いってきます」
そんな短い会話を終え、蛍樹は正面の横断歩道を渡った。
通り過ぎるのは大人、大人、大人。社会人となり、世の中にどっぷりと浸かりきった大人達。
ある程度の世の中のルールとデリカシーを弁え、ある程度の愛想と仕事が出来れば生きていける世界。
『上を目指す者は仲間を蹴落とし、蹴落とされた者は世の中から消えていく』
俺の両親の口癖だった。
蛍樹の両親は世界にも名を轟かす紀輪-キノワ-社の社長とその秘書だ。夫婦で世界規模の会社を経営している。
俺の名字と会社名が違うのは、追々……
暫く歩くと見えてきたのが、蛍樹の通っている高校の九重-ココノエ-高校。
最近改築されたばかりの校舎はそこら辺の学校より清潔で、頭は中の上。悪い噂も無い。
一昨年まで男子校だったが、教育方針の何とかで共学になったらしい。
女子の入学に不安はあったものの、ウチの学校は元々イケメンなる者が多いとの噂だったので、今では生徒の四割が既に女子とたくさんの入学者に恵まれている。
イケメン死ね!!………あ、つい本音が。
まぁ、何ら他の高校と変わらないと云う事なのだ。
賑やかな(喧しいだけだろ)校門を通り、蛍樹は自分の靴箱で上履きに履き替えると、音量を下げ、周りの音が良く聞こえるようにした。
誰とも挨拶を交わす事無く、教室に入り、数人と挨拶を交わすと自分の席に突っ伏す。
今日も平和だなぁ…等と考えていると………
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