第二話:堕ちた先に……

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「本当か?」 「あぁ。出会ってまだ間もないが、私を信用してくれ」 シン蛍樹の顎に沿えていた指を離し、両肩に手を置いて真剣な眼差しで見てくる。 蛍樹はその眼がどうにも嘘偽りが無い様に見え、首を縦にゆっくりと振った。 シンは蛍樹が首を縦に振った事に感謝するかの様に、肩に置いていた手を離して、ギュッと蛍樹を抱き締めた。 「!?なっ……!?シン……!?」 蛍樹は吃驚してシンを突き放そうとしたが、シンの心臓の鼓動が気持ち良く身体中に響き渡ってきて、シンに甘える様に抱き締め返した。 その光景は、まるで親子が柔らかい抱擁をし合っている様な、胸が暖かくなる様なもので、シンは蛍樹が抱き締め返しきたのに気付くと、フフッと微笑し、蛍樹は少し顔が赤くなった。 どれくらい抱擁していただろう。太陽は天辺に登ったのか、日差しが強くなってきたその刹那―――――― 「うわぁぁぁあぁぁぁああぁぁぁぁああぁぁあぁぁぁあ!!!!!」 「「!!?」」 突然子供の悲鳴が聞こえてきて、蛍樹とシンは身体を離し、辺りを見回す。 どうやら子供はこの辺りにはいないらしく、蛍樹とシンは声のした方へ駆け出した。 距離はあまり無かったものの、現場の状況はあまり好ましい状態ではなかった。 左腕と左足を噛まれたのか、大量の血が溢れだしている小柄な少年と、獅子の頭、虎の躯の様な魔物が少年を襲っていた。 少年は目の前にある恐怖に足がすくんだ様で、後退さる事もしない。 魔物はジリジリと少年に近寄り、今まさに少年を食わんと欲すといった状態だ。 蛍樹とシンはなりふり構わず、少年に近寄り、状態を確認する。 「少年!!無事かっ!!」 「蛍樹気を付けろっ!!こいつは魔物の中でも中級レベルの大物だっ!!私でも手に追えんっ!!」 シンは魔物の相手をし、蛍樹は少年の怪我を回帰魔法で治している。 蛍樹は怪我の手当てをし終わると、少年に木の陰に隠れていろと指示する。 少年は泣きながら走って近くの木陰に隠れた。 蛍樹も早くシンに加わり、一旦魔物と距離を取って体勢を整える。 シンは右腕を引っ掻かれたのか、服に血が滲んでいる。 蛍樹はシンの怪我を服越しに回帰魔法で治療すると、一瞬驚いたが、感謝すると一言残し、前へ向き直った。 「シン…あの魔物は中級魔法でなら倒せるのか?」 「あぁ。打ち所が悪ければ即死。良ければ戦闘不能といった所か。殺すか?」 .
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