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相手のちょび髭親父の手元はワンペアで、カイの手元はロイヤルストレートフラッシュ。
カイの圧勝だ。
カイは何気ない様子でゲームをしている様だが、周りの男達や店員までもがカイの幸運を目の当たりにして悔しがったり褒め称えている。
そりゃあそうだ。彼の手元と足元には数えきれない程の金貨や銀貨に札束が重ねられているのだから。
蛍樹は一瞬その嘘の様な光景に絶句したが、正気を取り戻して言葉を紡いだ。
「俺は今から入団試験って云うの受けてくるから、此所で待っててくれ」
「うんっ!!分かったよ蛍樹お兄ちゃんっ!!頑張ってねっ!!」
「あぁ、行ってきます」
カイがぶんぶんと大きく手を振っているのに、蛍樹は笑って振り返すと、受付嬢に付いて行った。
階段を下り、受付嬢は古びたドアを開けると小さな小部屋に辿り着き、中央に置かれたテーブルには水晶が。
受付嬢は制服のネクタイを緩めると、説明を始めた。
「では、この『決しの魔水晶』に魔力を流して魔力値を測って下さい。試験はその値に合わせて行います」
「分かりました。あの……一つ質問、いいですか?」
「何ですか?」
「魔力を流すって……どうするんですか?物質に俺の魔力を纏わせる様な感じですか?」
受付嬢は一瞬面倒くさそうな表情をすると、はぁ……と溜め息を吐き、説明し始めた。
悪かったなそんな知識も無くて此所に来て。
「流すと云うのは纏わせる事ではなく、細い糸の様にして、魔水晶に注入する事です。穴や入り口はありませんが、そこは脳内イメージでカバーして下さい」
「…………はい、分かりました」
蛍樹は受付嬢の反応をスルーし、魔水晶に両手を翳して魔力を流し始めた。
蛍樹は夢の中で神に魔力を高めるお願いをしていたので、どの位高くなっているか分からないが、全力を出せば魔水晶は破壊するだろうと推測した。だって糞神だもの。
蛍樹は若干、魔水晶に流す魔力を十分の一に弱め、その分だけの魔力を魔水晶に流した。
魔水晶は色々な色に変化し、最終的には黒一色となり、亀裂が走った。
すると――――――――――。
「きゃっ!!今朝取り換えたばかりの魔水晶がっ!!」
「えっ!?あ、その、魔水晶壊しちゃってすみませんでしたっ!!」
ヤバッ!!魔水晶ってこんな簡単に壊れるもんだったのっ!?目立たなくしようとしてたのに台無しだっ!!
魔水晶は魔力の許容範囲を越え、綺麗さっぱり粉々に紛失してしまった。
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