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けれど、那弓ちゃんの料理の腕前は私の想像を遥かに超えたものだった。
「あぁ、もう。上手くいかないわね」
「あっ、それは入れすぎだよ」
「イライラする。もう……、真田っ!!」
ついさっき追い出した然を大声で呼び戻す。
扉の近くにいたのか然はすぐに厨房へ入って来た。
「お茶の準備して。休憩するから」
「かしこまりました」
そう返事をした然と目が合ったので私は然に近寄る。
「美波?」
「もうちょっとかかりそうなの。お茶は30分後に那弓ちゃんの部屋に用意してね」
「え、あと30分もするの?」
私の声が聞こえていたのか那弓ちゃんが驚いたような声を出す。
「もうちょっとだから頑張ろう」
然が厨房を出て行くのを見送り、私は那弓ちゃんの横に戻る。
「あと、これ入れて、焼いて冷やすだけだから」
「分かった」
「でも、那弓ちゃんは誰にあげるの?」
「ん~、婚約者……いや、政裕ね」
那弓ちゃんが楽しそうな、嬉しそうな顔をする。
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