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大体、現在絶賛一心同体中の俺が死ねば、絶対的な強度を誇る真白も道連れになるというのに、この女子中学生はまるで危機感を抱いちゃいないのだ。
「大丈夫だよ、ゆきりん。真白は誰よりもゆきりんを信頼しているから。だからゆきりんなら真白の寝首もかけるんだけれども」
グググ、と唾と言葉を同時に喉へと押し込んだ。
この女はわかっているのだ。俺が御門真白を暗殺する為に派遣された魔術師見習いだということを。
知りながら俺の命を助けて、オマケに使い魔として契約するという悪趣味と悪意の持ち主なのである。
一体何を考えているのやら。
「というか真白は現在、スランプ中なんだよね」
「スランプ?」
「スランプというか制約? 契約? とにかく! 真白は今、魔術が一切使えませーん。多分今の真白はチワワにも敗北を喫するよ……!」
「――はぁ!? 詳しく話せよ」
「説明は難しい。圧倒的に語彙力が足りない」
「学校に行け」
「そんなことをしたらクラス中に真白菌の恐怖が! 未曽有のバイオハザードだよ。真白菌に感染すると女子が泣くからね」
「……オマエいじめられてるのかよ」
「端的に言ってしまうとそうですな」
現存する魔術師が畏れ、敬い、神話という二つ名を持つどこぞの中二病全開のライトノベルのような設定を持っているというのに、公立中学校でイジメの被害に遭っているなんて冗談にしては笑えない。
ボクシング形式でいくのなら中学生が世界チャンピオンになってしまう。
「ゆきりんにだから話すけれども、真白って新月に近づく一週間は――月経と連動させてるんだけれども――魔術が使えなくなるんだよね」
舌を出して、柔和な表情を浮かべる真白。
そんな弱点を刺客に教えるなんてどうかしている。
それともこれも真白の罠なのだろうか。俺の忠誠心を測っているのかもしれない。
「ちなみにあとどれくらい続くの?」
「あと六日だよ。今日は初日で、真白はご機嫌ナナメ! ちなみにこれが終わったら月と地球の位置関係を固定するつもり」
「人類が衰退するな」
「滅べばいいと思うよ。真白とゆきりんだけの世界も悪くないかなって最近は思うんだ。いやん、これってひょっとしてプロポーズ!? 真白ってば大胆なお、ん、な!」
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