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「近々、世界そのものを作り変えるつもりですが何か?」
無い胸を張って、人の眼前に持ってくる。突くぞコノ、と睥睨して嘆息を浴びせた。
「この世界は狂ってるんだ」
「俺はオマエのほうが狂っていると思うよ」
真性の狂人だ。だからこそ真っ当な世界が歪んで見えるのだろう。
「あー、ゆきりんはまたそういうことを言う」
ブーブーと奇妙な音を発しながら、真白は湯船から上がってタイルの上に直接座ると、小さな手のひらにシャンプーをふんだんに載せた。
珍しく自分で髪の毛を洗うつもりらしい。
「それにしても民主主義が、欧米の思想が絶対です、正しいのです、それ以外は悪なのです、っていう傾向には笑っちゃうよね。真白はそうは思わない」
「俺はそう思うよ」
だからこそ繁栄し、それを反映しているわけで。
「人間って本来そういう風にはできていないんだよ。人間なんて欠陥だらけじゃん。法律なんてもので縛らない限り社会を回せないんだからね。みんなが平等です、誰にでも権利があります、っていうシステムはムリムリムリ! 誰かが厳しく統率する必要があると思うの。例えば江戸時代のように。あの時代のシステムは何だかんだで一番優秀だったんじゃないかな。何せ二千年も太平の世を築いたのだから」
「いや、オマエはマジで学校に行けよ。今西暦何年だよ。江戸時代は二百年ちょっとだよ」
「二百年も二千年も変わらないでしょう?」
「相変わらず発言がデケェな!」
さすがは世界五分前仮説を覆せる唯一の存在だ。
「絶対的な君主が必要な時代がきているんだと思うよ」
「それになるってか?」
「いんや、私は愚民を監視する君主を監視する側かな。抑止力として在り続ける。それが私の夢。ケーキ屋さんの次にそれになりたい」
「ケーキ屋になってもつまみ食いはできないからな」
「じゃあ嫌だ」
「抑止力になったってツマラナイだろ」
「そんなことないよ。色々とヴィジョンはあるんだよ。まずは人口を削減するでしょう? 階級を作るでしょう? 魔術なんてものを消し去るでしょう? それでゆきりんを世界の王様に据える」
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