第2章

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私が川井鉄平さんと知り合ったのは、ちょうど10年前。 短大に入って芝居を始めた私は、社会人になってからも劇団を転々としながら、芝居を続けていた。 たまたま次の出演予定が何も決まってない時期に、短大の演劇研究部の先輩から、役者を探しているところがあると紹介を受けたのが、鉄平さんが所属している劇団。 ある大学の演劇研究部に所属していた人達で構成されており、現役生もいれば社会人もいる。作演出は卒業したばかりのフリーターである宇野耕介君が担当していた。 大学を留年していた鉄平さんは、宇野君とは同期にあたる。 年齢的には、私は彼らの一つ上ということで大差はなく、劇団に打ち解けるのもスムーズだった。 劇団の中心的人物は、勿論、作演出を担当している宇野君。 そして、装置や音響、照明などの技術的な部分をサポートしているのが鉄平さん。 冷静沈着、終始毒舌極まりない宇野君。 怒ったところを誰も見たことがないという穏和でマイペースな鉄平さん。 一見、水と油のようにも思えるのだが、一緒に稽古する内に、二人がパズルのようにお互いの足りない部分を埋め合わせ、この劇団を上手く回していることに気付く。 .
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