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店員が平謝りしながら片付ける中、宇野君は力なくうなだれ、私を恨むように見つめた。
「……何も台本でオムライス受けることないじゃないですか。そんなに………この本が気に入らないんすか?」
「本当にごめんって!咄嗟に受け止めようとしたら、台本で両手がふさがってたし……ね?」
鉄平さんに助けを求めると、すかさずフォローが入る。
「データ残ってるんだろ?またプリントアウトすればいい話だろ。」
宇野君は、いや、まぁそうなんだげとさぁ…と未だ消えない憤りをぶつけるかのように頭を掻きむしった。
「………そりゃあ、手書きの原本って訳じゃないですし、また刷り直せばいい話ですけどね………。けど!……台本っていうのは、書き手の魂が籠ってるっていうか………。」
「……それはわかってるよ。本当、ごめんね…。」
原本でないにせよ、大事な台本を駄目にしてしまったことを再度詫びる。
すると、少し冷静さを取り戻した宇野君は、椅子の背にもたれて、こう言った。
「……で、どうします?台本はトマトソースまみれで読めないですけど。また仕切り直しますか?」
私は、少し考えてから、もう大丈夫と答える。
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