第3章

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私達は、例のオムライスで有名なチェーン店に入り、手早くオーダーを済ませた。 幾分緊張の解けない私を察してか、鉄平さんが口を開く。 「……10年振り、ですかね?里佳さんと話すの」 当時のように名字ではなく、名前で呼ばれることが、くすぐったく感じる。 「うん、それ位経つかな。……卒業してから、地元に戻ったって聞いたけど?」 「そうなんです。今もそっちで暮らしてるんですけど、月に一度、取引先に納めた機械のメンテナンスの関係で、この街に来ることになってて。…今日は午前中のアポが、先方の都合で午後からに変更になったんで、急遽映画見て時間潰し……という名のサボりですね。」 そう言って、彼はいたずらっ子のように笑った。 「……にしても、あの映画のチョイスはなくない?鉄平さん好みじゃないでしょ?」 「…ですね。映画見て、メシ食って、先方のところに行く時間を逆算すると、あの映画しかなかったんですよ。」 そういうこと、ね。 「でも、すごい偶然に里佳さんに会えたから………それはそれで良かったかな。」 そんな風に言われると……少し、ドキッとしてしまう。 .
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