第3章

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すると、彼はスーツの内ポケットから名刺入れを取り出し、名刺の一枚に携帯の番号を書き、私に差し出した。 「今度埋め合わせするんで連絡下さい。…えっと、もう時間ないんで、出ます。本当すみません!じゃあ、また!」 そう言うと、テーブルの伝票を掴み、小走りに立ち去った。 …………何なんだ、本当に。 そう思いながらも、この数時間の出来事の、あまりの展開に笑いが込み上げる。 最初は溜め息つくしかないような休日の始まりに思えたけど………。 案外、心の中はスッキリしていた。 久々に、昔と変わらず彼とこうして話ができたからかも知れない。 彼に避けられなかったことで、私自身が避けていた昔の私と向き合えたような気がした。 独りになったテーブル。 目の前に置かれた名刺と、彼が食べかけたオムライスを眺めながら、改めて食事を始める。 全て綺麗に食べ終えた後……。 私は名刺を丁寧に4つに裂き、灰皿に捨てて店を出た。 .
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