第1章

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その日は久々のオフで、私は子ども達を保育園に預けたその足で市内の映画館へ向かった。 空はどんよりとして、今にも雨が降りだしそうだ。 やっぱり部屋干しにしたら良かったな、と悔やみながら、足早に映画館へと向かう。 子ども達が生まれてからというもの、毎日がバタバタの連続で、こうしてたまに平日に休みが入ると、息抜きがてら、映画を観て、ゆっくり一人でランチを取るのが、今の唯一の楽しみだ。 平日の午前中ともあって、チケットを求める人々も疎らで、驚く程に閑散としていた。 「…それでは、8番シアターにて間もなく上映開始となります。」 私は買っておいた前売り券をカウンターで引き換えてもらうと、上映が始まる8番シアターへと向かった。 シアターの中には数える程しか客もいなかったが、中央の観やすい位置に座席を取った為、同じ列には一組のカップルと男性客が座っていた。 私は座席に座ると、映画館に来る前にカフェでテイクアウトしたカフェラテを肘掛けにセットする。 荷物と脱いだコートを空いている隣の席に置いたところで、声を掛けられた。 「……中村さん?」 .
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