179人が本棚に入れています
本棚に追加
/126ページ
すると、何だか気配を感じて振り向くと、彼が怪訝な表情でこちらを見ている。
どうやら溜め息があまりにも大きかったようだ。
…何やってんのよ、私。
恥ずかしさのあまりに慌てて目を逸らす。
しばらくしてから様子を伺うと、彼はまた映画に集中しだしたようだった。
徐々に内容がクライマックスに近付くにつれ、私も彼の存在を忘れのめり込んで行く。
学生時代を思い出すような青い世界。
スクリーンの中の彼らは、エネルギーを持て余し、やるせない気持ちをぶつける先を探している。
私にとっては懐かしいような……まだその真っ只中にいる彼らが羨ましいような…複雑な気分。
あの頃に戻りたいとは思わないが、あの頃のような躍動感はもう手には入らないことは寂しい。
気持ちの有り様は、年齢に忠実だ。
.
最初のコメントを投稿しよう!