第1章

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エンドロールが流れ、気の早い客が帰り始めると、彼は腰を屈めて、こちらに近付いてきた。 「時間あるなら、どこか飯でも行きませんか?」 私は戸惑いながらも、うん、と返事をした。 荷物をまとめて、半歩彼の後を歩いていると、映画館を出た辺りで、彼がこちらを振り向いた。 「あの……すみません。ひょっとして迷惑でした?」 そう言って、困ったような表情でこちらを見ている。 「ううん、大丈夫だよ。私もお昼食べて帰るつもりだったし。」 そういうと、彼は安堵の溜め息をもらす。 「良かった。……あの時からまともに話してないから、こんな風に声掛けちゃまずかったかなって………。あの時のこと、怒ってるんじゃないかと思って。」 ……あの時? ………あぁ…。 私があなたに振られた時ね……。 いや、わざと避けるつもりもないけど、普通は距離置くでしょ。 それに、大学卒業したら、知らない間に地元に戻ってたじゃない。 話す機会がなくなっちゃっただけだよ。 .
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