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麒麟の持っている車の図鑑に見入っているよう、わざと下を向いて、空き地の前を通る彼女に気づかない振りをした。 「あ」 麒麟の声に顔を上げると、足音もなく、筏が僕たちの、いや厳密にいえば僕の前に立っていた。 「どうしたの。筏さん」 麒麟の問いかけには答えず、筏が僕に言う。 「今日の昼休み、仲間はずれにされていたでしょう」 女子の休み時間の過ごし方は不明だ。 男子は給食が終われば外に争うように飛びだすが、女子の同じような姿は見たことがない。
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