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それを探していると、思わぬ言葉が降ってきた。 「うちも同じ。お父さんがいないよ。お母さんは、少し前に病気で死んじゃった」 小さな赤い口がハッキリと動く。 聞き間違いかと思ったが、筏はそれだけを言うと、僕の返事を待たずに空き地を出ていった。 走るわけでもない。 背中を丸めるわけでもない。 その颯爽とした後ろ姿に、僕は口を開けたまま、呆気にとられた。 親がいないと、自分から話す奴がどこにいるのだろう。 一人の異物は攻撃の対象になるかもしれないのに、どうしてそんなに強くいられるのか。 「ねぇ、仲間はずれにされてるの?」
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