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麒麟にも少しだけ馬鹿にされたような気分になったが、それでも僕の心はかなり晴れていた。 麒麟と図鑑を読んでいるより、同級生に謝られるより、僕には筏にも親がいないと知ったことのほうが嬉しかった。 学校で美女と有名な女の子との共通点。 そして、おそらくそれを自分しか知らないであろう秘密になったこと。 スキップしそうな勢いで家まで帰ると、玄関のタタキを掃除していた祖母が言った。 「なんだい。いいことでもあったのか。嬉しそうじゃないか」 「分かる?」 「ばあちゃんにも、分けてくれ」 箒で掃きながら、冗談のような調子で言う祖母に、僕は笑って返した。 「ばあちゃん、筏って家知ってるか?」
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