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「二組の楠木。あいつの家も来月出るらしいぞ」
「そうか。人は向き合うことをしないからな」
僕は麒麟を促して立ち上がると、並んで家路を辿る。
ここら辺では高校生の欲求を満たしてくれるような遊び場はないが、その分話をしながら遠回りするだけで気が紛れることもあった。
「神社、回っていかない?」
麒麟が突然そう言うことも珍しくなく、僕は二つ返事で了承した。
「鰻はどうするんだ。センター試験、受けるんだろう」
「一応な。外の世界にも行ってみたいだろ」
「俺は、出ないさ」
呉服店のあった坂道を下り、交番の横道に踏み込む。
そこからは舗装されていない畦道で、枯れ葉が乱れている。
車も通れない細い一本道で、数百メートルの森が続く。
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