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麒麟の名をもつくせに、身長は同学年の中で一番に低いこの男は、なにかといえばこの神社に来たがる。 洗練、だとか浮世ばなれだとか妙に大人じみた言葉で説明されるが、僕にはよくわからない。 それでも付いてくるのだから、やはりどこか引力のようなものがこの場所にはあるのかもしれない。 森を抜けると、左右に畑が広がる。 この時期に植えられているものはほとんどなく、茶色の土が横たわっているだけだ。 前から、一輪車を引いた老人が歩いてくる。 足首がすぼまったモンペのような青いズボンを穿き、目元まて深く帽子を被っている。
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