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「はじめまして、じゃないけど。これからよろしくね…?朱鳥さん」そういって女はぎこちない笑みを浮かべながら手を差し伸べてきた。
私は営業スマイルさえも浮かべず機械的にその手を取った。そこには、この女を母として認め、歓迎する意思はなかった。
しかし、女はそのように思ったようで、ホッとしたような笑みを浮かべた。やはりつくづく、浅はかで単純な奴だ。
女の名前は池本春夜。私が通う私立聖フランシス学園の教員であると同時に、私のクラスの担任である。一部の生徒からは絶大な人気がある一方、毛嫌いしている生徒も少なくはない。性格はサバサバしていてボーイッシュ、男子がいない女子校では需要が高いようだ。しかし、本性は逆だ。内面はとにかく女々しい。簡単に言ってメンタルが弱すぎる。まぁ…、教師である以上、他の教師のように己の心身を守る為に偽善者になろうとしているようだが、成果は全く出ていない。むしろ逆効果だ。まぁ…、この女がどうなろうと、何になろうと興味は無いし、私には関係ない。私は一人でいい。大切な人、愛する人はこれ以上要らない。もう私は握手した手を直ぐに離した。
そして横で薄ら笑いを浮かべているあの人を見た。
「成る程な、貴様が好きそうなゲームだな」
私がそう言うと、女はギョッとした目で私とあの人を交互に見た。どうやらこの女は話の全貌を聞かされていないようだ。最も、あの人はわざと言わなかったのだろう。まぁ、当然と言えば当然か。
「ふ…、では、確認のために敢えて聞かせてもらおうか。その前に春夜、」
「はい…」
「お前は下がって部屋で待っていなさい。後から私もそちらに行く」
「わかりました…」
そう言って女は出ていった。
恐らく何度も、何度も振り返りながら…
そして女が出ていった後の扉は、ゆっくりとそして重々しい音を響かせながら閉じた
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