柴崎朱鳥

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扉がしまった後、目の前の男は紅茶を一口飲んで深呼吸した。 「さて、改めて聞かせてもらおうか」 「要はドールゲーム。あの女の本当の娘のように振る舞い、あの女を精神的に悦ばせ、そして貴様の会社が業務提携したことで最近急成長した常磐グループの御曹司と結婚し、いかにいい娘、そしていい女という舞を舞えるか、というゲームだろ?まぁ、恐らく後者の方がメインだろがな。どちらか一方でも関係が崩れたらゲームオーバー。私はこの世から消される。そして、ついでにあの女も。あの女と結婚したのは私を観察させる駒にする為だ」 あの人は黙って私の方を見ていた。この鋭い眼光に射られると他人は身動きが出来なくなるらしいが、私はそうでもない。私も同じように言われるからだ。 するとあの人は突然大きな声で笑いだした。 その笑い声は不気味で冷たかった。真の「冷笑」とはこのことを指すのだろう 笑い声が収まるとあの人は話し始めた 「朱鳥、お前は本当に素晴らしい子だ。頭脳明晰、容姿端麗。この言葉が見事に当てはまる。だが、お前は大切なものは手に入れられない。手に入れても向こうから消えてしまう」 「何が言いたい」 「お前の答えはほぼ間違っていないが、まだ不十分だ」 「どういう意味だ」 「お前には私の後を継いでもらう」 「私は女だ。男女平等だの男女共同参画社会だのと世間は言うが、必ずしもそれが正しく機能しているかと言えば、断言出来ない。そして、貴様の会社の理事長、つまり私の祖父は典型的な男尊女卑だ。女で、しかも前妻の子の私を次期社長にするなど許すはずがないだろう」 「だからだ」 「は?」 「お前には父に抗うことの出来る力がある」 「もし仮に私が貴様の要求に全て応えたとして、その見返りはなんだ」 「この世の全てだ」 「戯言か?」 「知らないのか?私は世界の全てを握っている。お前が私との契約を果たした時、私はお前にこの世の全てを与えよう。そして私はこの世から消える」 「自殺する、ということか」 「そうだ」 「面白い。いいだろう、契約しよう」 「だが逆の場合もある」 「つまり、私が貴様との契約を果たせなかった場合か」 「その時は」 「私が自殺する、か」 「契約におけるペナルティは平等なほうが面白いだろう?」 「あぁ、そうだな」 「タイムリミットは15年後の今日、3月3日の午前0時」 「いいだろう、だが、一つだけ条件がある」
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