柴崎朱鳥

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図書館に通じる渡り廊下を歩いていたら、反対派から白衣を着た女が歩いてきた。 私は挨拶も会釈もしなかった。 「挨拶もしてくれないの…?」すれ違った時に女が言い出した。 無視して図書館に行こうとしたら腕を捕まれた。 「私達、家族でしょ…?私は朱鳥のお母さんなんだよ…?」 女が泣き出した。 別にかわいそうともウザイとも思わなかった。何故なら興味がないから。愛の反対は無関心、とはよく言ったものだ。 「放してください。それと、ここは学校です。家ではありませんので、私にとって池本先生は先生でしかありません。失礼します」 と言って、腕を振りほどこうとしたら逆に強く掴まれた。 「家でもお母さんって呼んでくれたことないじゃない…。学校でも挨拶すらしてくれない…」 「おはようございます。池本先生。これでいいですか?」 「朱鳥…、わたしは」 キーンコーンカーンコーン×2 チャイムが鳴った。結局、図書館行けなかった…。 「…チャイムが鳴ったので失礼します」 私は腕を振りほどいて、教室へ戻った。 女は何も抵抗せずに、ただ立ち尽くしていた。
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