柴崎朱鳥

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リムジンに揺られ、たどり着いた先はどこか懐かしい場所だった。 薄気味悪い程までに白い館、館の前には聖母子を象った大理石の噴水と広大な庭園が広がっている。 私が薫森朱鳥だったころ住んでいた家にそっくりだった。 あの頃の私の目には、噴水の聖母子像は幸せそうに見えていた。だから毎朝お祈りをした。 何を祈ったかは忘れてしまったが、多分 「父さんと母さんが早く帰ってきてくれますように」 だったと思う。 「朱鳥様。」 二階堂さんに名前を呼ばれて、我に帰った。昔を懐かしみ過ぎてしまったようだ。 「旦那様が中でお待ちです。どうぞこちらへ」 二階堂さんはそういって歩き出した。 私は二階堂さんに着いていった。
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