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パッとお札が舞う。
しかし、おそらく自分が思った方向に飛んだわけじゃないのだろう。ウルウルと瞳に雫が溜まって、体がぷるぷる震え出す。
昔は泣き虫だった。
今みたいに気も強くないし、どちらかと言えば、気弱だったっけ。
弾幕がはれない。
掃除ができない。
妖怪が倒せない。
ない、できないが溜まっては泣き、よく慰められていた。
「ほんと、昔は可愛かったのね私って」
でも、いつからだっけ。
今の私になったのは。
頭をよぎった疑問も目の前の光景にかき消えた。
ーーー紫だ。
変わらないその容姿。
あいつが妖怪なんだと嫌でも思い知らされて。
少し胸が痛くなる。
「どうしたの?霊夢」
「だん、弾幕がっ、・・・ひっく」
「うまくできないのね」
「う、んっ・・・・・・うぅ」
「そっか、じゃあどこかに遊びに行きましょうか」
「えっ、でも・・・お母さんが」
「いいわ、私が言っておくから。今日はあなたの好きなところに行きましょう」
「いいの?」
「霊夢は嫌なの?」
「ううん、紫と一緒に行く!」
紫の手をぎゅっと握る。
このまま二人は紫が出したスキマに入って、いろんな所を見て回る。人里も紅魔館も地獄も地下も山も何もかも。
ふつふつと浮かんでくる思い出の欠片が、合わさって確かなものになる。
「・・・紫」
この時ぐらいからだったな。
紫が私のそばにいてくれるようになったのは。
弾幕の相手はいつも紫だった。
話し相手も紫が大半。あの笑顔をいつだって間近で見ていたんだと。
「・・・ばーか」
誰に対して、言ったのか分からなかった。今まで気づかなかった私か、何も言わない紫にか。あるいはそのどちらか。
会いたいなー。
紫に。
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