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場面は変わる。
枯れた木たちが寒そうな枝を揺らしながら、私達を見ていた。
「嫌だ、紫ぃ!!」
「ごめんなさい。もう私は眠らなくてはいけないの」
「嫌!嫌ぁ!」
「春になれば、また会えるわ」
「・・・・・・それホント?」
「ええ、ホント。良い子に待ってたら、ご褒美あげちゃうわよ?」
「約束?」
「ええ、約束」
「・・・・・・分かった」
しぶしぶ紫の袖を離す。
涙は拭えど拭えど流れては、巫女服を濡らして。泣きながら、紫に手を振った。
紫もどこか嬉しそうに、手を振り返す。
この5ヶ月後、確かに紫はいつもと同じように笑顔を浮かべて帰ってきた。そして、
「あいつ、ご褒美とか言って、私のファーストキス奪いやがったわね、そういえば」
嬉しそうに駆け寄る私を抱き抱えて、そのまま流れで、チュッ。とかやってくれて。しかも私は恥ずかしそうにしてたような。
やな、思い出だ。
ホントに紫に会って話をする必要がありそうだ。いろんな事を含めて。
「・・・・・・ぃむ」
遠くから何か聞こえる。
「れ、・・・ぃむ」
「私を呼ぶ声?」
「・・・霊夢」
確かに聞こえると同時に、風景が急速に遠ざかっていく。視界が明るい。そして、ようやく目覚めるんだということに良かったような、勿体ないような不思議な気分を味わっていた。
ふっと、体に自由が戻る感覚。
私は目を開く。
「れーいむっ」
「・・・・・・紫」
目を開けた先には、どアップの紫。
ふにふにする、頭の下の感覚と顔の近さに膝枕されていることに気づく。
「おはよう」
「あんた、何してんの?」
「何って、・・・膝枕?」
「んなことは分かる。なんで居るのよ?」
「霊夢が呼んだんじゃない。ほら、お茶だって用意されてたし」
「それは、・・・あんたの分じゃないわ」
「あら、そう。でももう飲んじゃったから」
「まぁ、いいわ。で、いつまでこうしてるつもり?」
「霊夢が嫌がるまで。・・・というか、今日はやけにおとなしいわね?」
「そういう日もあるの」
ゴロンと寝返りを打つ。
紫と目線を外すと、そこは確かにいつもの博麗神社だ。傷ばかりあって、でも昔の名残ものこした、いつもの。
紫はそっと頭を撫でてくれていた。
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