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「紫」
「なあに?」
「少し昔の夢を見たの」
「・・・そう」
「小さい頃の私が居て。紫がそばにいて。・・・そういえば、いつも私の近くに居た。きっとお母様よりあなたのそばにいたかもしれないわね」
私は何を言ってるんだろう。
だけど、どうにも止まらない。
「私が弾幕はれない時も、泣いてばっかりいる時も」
「そうね、あなたってばホントに昔は可愛かったんだから。紫、紫ぃって」
「そうね、そんなこともあったわね」
「・・・霊夢が怒らない」
「うっさいわね」
「どうぞ、続けて?」
「だから、っ・・・・・・やっぱり何でもないっ!」
私が何を言いたいのか気づいたとき、一気に顔が熱くなった。誤魔化すように、紫の太ももに顔を押し付けて、叫ぶ。
文句を言うつもりだったのに、告白しようとしてどうする私。
「だから、何?」
ぐいっと顔を掴まれた。隠していたはずの顔が、紫の眼前にさらけ出される。
そう、齢何百歳の若々しいスキマ妖怪は何でもお見通しだった。私なんて、やっぱり今でも子どもなんだろう。
「霊夢の口から聞きたいわ」
「だから、何でもないって・・・」
「れ・い・む・の・く・ち・か・ら・き・き・た・い・わ」
「・・・っ、だからっ!・・・・・・これからも、私のそばに居なさいよねっ!」
熱い。熱い。
ひたすら、熱が集まる顔を両手で隠して荒くなった息を整えようとする。
人間極限に恥ずかしくなると、本当に溶けそうになるらしい。ひどい熱さだった。
「ありがとう、霊夢」
紫の声が振ってくる。
「すごく、嬉しい。・・・ちょっとごめんなさい」
そっと手を退けられる。
柔らかく包まれた手首に、抵抗なんて出来なくて。近づく紫の顔を避けるなんて思いもしなかった。
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