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今日も相変わらず、私はダラダラする。時々思い出したように、箒で境内を掃除するフリをしながら、でも大部分は縁側に座りながら空でも眺める。
それが最近の私の日課で、そこに特に目的はなかったりする。
「おい、またサボりか?」
「・・・魔理沙」
スタッと軽やかに地に降りたのは、白黒の魔女服に身を包んだ魔理沙。不敵な笑みをしたまま、帽子を取ると隣に座る。
「もてなしもないのか?」
「お茶請けあるなら、出してあげないでもない」
「きのこならあるぜ」
「じゃあ、お茶無し」
「えー、がっかりだぜ」
言葉の割には、そこに私を責める響きはない。だから私はまたぼんやりと空を眺めつつ、魔理沙の話に耳を貸した。
最近咲夜に殺されそうになったとか、アリスから怒られて家から追い出されたとか、まともな話はなんにもなかったけど、笑いながら話している魔理沙の顔を見ると、悪い気分じゃない。
「・・・・・・」
話の間のふとした沈黙。
魔理沙の息を飲む声が聞こえた気がして、視線を遠くに放り投げる。
「霊夢、寂しいのか?」
そんなんじゃないわよ。
そう返すのはきっと昔の私だったら簡単だったにちがいない。
しかし、今の私には、どうしてもそう言うことが出来なかった。やっぱりという納得の気持ちと、そうだったのかという驚きが心の中に渦巻く。
「レミリアも心配してたぜ。というか心配してないやつなんか、幻想郷にはいないぜ。」
「・・・そう」
ありがとう。
そう音にはならない空気で喋る。
魔理沙には伝わったのか、一度だけ苦笑して、また話を再開した。今度は本当に少しばかり、興味を持っていれば聞くことができた。
魔理沙が帰って、すでに日は落ちている。山奥にある神社には、人の喧騒は聞こえるはずもなく、鳥や虫の鳴き声だけがこだまする。
ずいぶん暖かくなった。
もうきっとすぐそばに春が来ているだろう。
なのに、あいつはまだ来ない。
もう何年も会ってない気がして、その朧気な輪郭を捕まえようとして、何度もするりと逃げられる。
寂しい。
会いたい。
抱きしめて欲しい。
「・・・バカ紫」
私の声は、儚く消えた
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